実が落ちる前に

自作小説を公開するブログです。暇なとき、読んでいただけたらうれしいです。小説は作品ごとにカテゴリー分けしています。日記や雑文はその他カテゴリーです。

曽根圭介「沈底魚」の感想(ネタバレあり)第53回江戸川乱歩賞受賞作


沈底魚 (講談社文庫)
 

 現職国会議員に中国のスパイがいるという情報によって、極秘に警視庁外事課に捜査本部が設置された。指揮官として警察庁から女性キャリア理事官が送り込まれるが、百戦錬磨の捜査員たちは独自に捜査を進める。その線上に浮かんだのは、次期総理の呼び声高い芥川健太郎だった。第53回江戸川乱歩賞受賞作。

(文庫本裏)

 

感想(ネタバレあり)

彼はスパイ……ではなく二重スパイ……と見せかけて実は三重スパイ、というように、次々とどんでん返しが起こります。でも、「やられた」「そう、きたか」というような感じがしないのは、あと出しジャンケンになっているから?読みながら「ああ、書き手がそう言っているんだからそうなんだろうなあ」というくらいの衝撃・感動しかありませんでした。

ただでさえ中国人の名前が覚えにくいのに、そこに「肉まん」だとか「海坊主」だとか、コードネームやあだ名がついているので、混乱しました。警察側も人数が多くて覚えにくかった(特に、五味の子分たち)。

一番がっかりしたのは、ここまで大騒ぎして、結局全部茶番だったということ。最初から、国会議員のスパイを探すということ自体、それほど魅力のある謎じゃないなと思いながら読んでいました。だって、解決してもその国会議員が失脚するくらいの話(まあ、国の機密が漏れていたというんだからそれだけでは済まないんだろうけど。でも、国の機密が漏れていたのも過去の、もう済んだ話だし)。これが、「スカイツリーの爆破テロ計画の密告があった」とでもいうなら、手に汗握るドキドキ感だったと思うけど。せめて、大物政治家や総理大臣の暗殺計画がある、とかさ。

で、大騒ぎした挙句、出てきたのが「茶番でした。上層部は全部知っていました。中国をだますために、下々の者を踊らせただけ」という結末。うーん、なんだかなあという感じでした。