実が落ちる前に

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野沢尚「破線のマリス」の感想(ネタバレあり)第43回江戸川乱歩賞受賞作


破線のマリス (講談社文庫)
 

首都テレビ報道局のニュース番組で映像編集を担う遠藤瑶子は、虚実の狭間を縫うモンタージュを駆使し、刺激的な画面を創りだす。彼女を待ち受けていたのは、自ら仕掛けた視覚の罠だった!? 事故か、他殺か、一本のビデオから始まる、超一級の「フー&ホワイダニット」。第43回江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリ。

(文庫本裏)

 

感想(ネタバレあり)

推理小説というよりもサスペンスでした。おもしろかったです。

弁護士自殺の真相やなぜ偽のビデオを作り遠藤瑶子が利用されたのかなどは明らかにはなりませんでしたが、本筋とはあまり関係がないので気になりませんでした。まあ、考えだせば、偽のビデオを作ってまで麻生に罪を着せたい、それで得をするという人が見当たらなかったので、「何のために麻生はあんな目に?」という気がしなくはない。「自殺」で処理されていた事件を今更殺人事件としてほじくり返す理由といえば、麻生に罪を着せたかったか、あるいは弁護士殺人の真相を明らかにしたかったから、あとは……学園にとっても郵政省にとっても得はないよなあ。で、偽のビデオで偽の罪を着せるのだから「真相を明らかに」という動機でないことはたしか。じゃあ、麻生に罪を着せたかったからなのかというと、麻生がエリートコースのキャリア様なら麻生を蹴落としたいライバルは多かろうがそういうわけでもなかったし。うーん、ビデオの動機がわかりません。でも、本筋には関係ないので気にしません(笑)

文章はよみやすかったです。うんちくが多いのは閉口しましたが。難しい話は苦手、社会の授業みたいな話をされると眠くなります(+_+)

瑶子が狂っていくさまがおもしろかったです。死んじゃいましたが、麻生さんが最後にがつんと言ってくれたのもすっきりしました。最後の瑶子の映像は……あれ、私が視聴者だったら「は?」となったと思います。「なんでおたくに説教されないといけないの?」と。でも、最後の最後まで嫌な感じの女だったのも、瑶子のよいところでした。

尾行されたり盗撮されているのにガスメーターに鍵を置きっぱなしの不用心さとか、「麻生を尾行しなくていいから先にカメラ仕掛けておけよ」という手際の悪さとかはちょっと気になったかな。カメラ仕掛けてから、駅で待ち伏せすればよかったのに。それなら、先回りしてスイッチを押すだけだから。

それにしても遠隔操作やセンサーでスイッチを入れないところに、時代を感じますね。1997年、20年前の作品です。

息子の方は……あれが全くの悪意でなく、母親への愛情ゆえというのはちょっと無理があったかなあ。小学生が夜にビデオカメラを持って母親を尾行・盗撮する、それを身元を隠して送りつける、これが愛情表現や母親恋しさゆえの行動?父親のしつけや教育方針に疑問を覚えます(笑)瑶子もビデオカメラをプレゼントするときに、「相手に黙って撮っちゃだめだよ」という最低限のマナーを教えておくべきでしたね 。

これ、読んでいる最中から「このまま映像化できそうな話」と思っていたのですが、もうちゃんと映像化されていたみたいです。気になる方は見てみてください。私は……別にいいかな(^^;)


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