実が落ちる前に

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松本清張の「十万分の一の偶然」の感想(ネタバレあり)


新装版 十万分の一の偶然 長篇ミステリー傑作選 (文春文庫)
 

 〝ニュース写真年間最高賞〟に輝いたのは東名高速の凄惨な交通事故の写真だった。そのシャッターチャンスは実に〝十万分の一の偶然〟という評である。だが果してそれは本当に偶然か? 愛する婚約者をこの事故で失った沼井正平の執念の追求が始まる。報道カメラマンの生態を暴いて現代社会にひそむ病根を剔出する傑作推理長篇!

(文春文庫文庫本裏)

 

感想(ネタバレあり)

沼井さんの執念もすごいけど、あんな大道具を作ってシャッターチャンスを作ろうとするカメラマンの執念?情熱??功名心??の方がすごいし、そっちの方がこわいというか不気味というか……でも、文章はそこまで登場人物の内面や内心は描かれていなかったかな。あまりドロドロしていなかったと思う。視点は沼井さんとカメラマンが中心(あと刑事とかもう一人殺されちゃう人の視点もある)ですが、どちらの視点のときも淡々とした文章でした。「この野郎、仇射ちだ」とか「あいつには負けない」みたいなドロドロ、ギラギラとした内心を描いた文章はあまりなかった。

この小説は映像の方がおもしろいかもしれませんね。事故のシーンだとか、事故を起こしたトリックだとか、映像の方がわかりやすいし映えるような気がします。クレーンの上のシーンも、読んでイメージするより目で見た方が、ドキドキしそうです。私は高所恐怖症なので、イメージするだけで足が震えましたが(´・ω・`)

とてもおもしろい作品でした。「わるいやつら」や「強き蟻」のような、ドロドロギラギラした主人公や話もよいけど、こういう作品もよいですね。