実が落ちる前に

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吉村達也「王様のトリック」の感想(ネタバレあり)

 


王様のトリック (双葉文庫)
 

 大雪に閉ざされた山奥の「奇巌城」。招待された老優・僧侶・英会話教師・推理作家・テニス選手の五人を待ち受けていたのは、真っ赤な部屋の壁に貼られた五枚のトランプと「王様のトリック」と題する死の宣告文!《これから殺人劇の幕が上がる。犯人はふたり。犠牲者の数は…未定》犯人が複数という前代未聞の雪の密室。最初の犠牲者が出て、残された四人の心理ゲームがはじまった!『ドクターM殺人事件』を改題・全面改稿。

(双葉文庫文庫本裏)

 

感想(ネタバレあり)

えっと、トリックはどこに……?

 

文庫本の帯には「この謎を解くことは不可能!?」と書いてあります。解くべき謎が見当たらないんだけど……犯人を当てろということ?

最初の殺人は、事前に仕掛けた毒(カップラーメンの中、気圧差があるのにふたが膨らんでいない→毒が仕掛けられているかも)だし、次の殺人は隙をついて殴り殺す(密室じゃないし、登場人物は皆別々の場所にいたからアリバイトリックもなし)だし、第三の殺人が読者に知らされる前に犯人明らかにされているし……それまでに犯人を推理する材料もなければ(ポットの件とかはあるけど決め手にはならない)、消去法で犯人を推理することもできない、どこがおもしろいのかよくわからない作品でした。

「犯人は二人」と宣言されているところが新しい?でも結局、犯人一人だったし。それほど長くない作品だから、「犯人が二人もいる」という恐怖や疑心暗鬼で登場人物同士がパニックに陥ったり、「あいつとあいつがグル」という推理をする間もほとんどないまま、どんどん殺されて話が終わっちゃった。「犯人は二人」の効果もあまりなかったような気がします。もう少し登場人物が多ければ、読者も「あいつとあいつ?」といろんな組み合わせが考えることができたかも。何せ、5人しかいないうえに、あれよあれよという間に、3人になっちゃうからさ。

トランプの件(ハートのキングがいない→背中合わせでジョーカーにくっついていた→ハートのキングがジョーカー・犯人)、「犯人は二人」は嘘やだましじゃないよの言い訳なんだけど、あまりおもしろくなかった。あと、これが「王様のトリック」の由来なのかな(キングが犯人)。

犯人の動機については、全くおもしろくなかったし、長かったから読むのがだるかったです。私、最後に犯人がだらだらと動機を披露するのは好きじゃないんだ。トリックと犯人がわかった時点で、動機にはあまり興味がわかない。犯人を推理するうえで必要な動機なら、ちゃんと読むんだけど。特に、それまで本文で明らかにされてこなかった事情がどんどん出てくるタイプの自分語りは嫌い、「知らんがな」と思ってしまいます。

今回、一番かわいそうだったのは、犯人の過去と全く関係ないのに勝手に恨まれて殺された(しかも一番ひどい殺され方)小説家さんでした。