実が落ちる前に

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近藤史恵の「凍える島」の感想・トリックのメモ(ネタバレあり)第四回鮎川哲也賞受賞作


凍える島 (創元推理文庫)
 

友人と喫茶店を切り盛りする北斎屋店長野坂あやめは、得意客込みの慰安旅行を持ちかけられる。行先は瀬戸内海に浮かぶ無人島。話は纏まり、総勢八名が島へ降りたつことになる。ところが、退屈を覚える暇もなく起こった事件がバカンス気分を吹き飛ばす。硝子扉越しの室内は無惨絵さながら、朱に染まった死体が発見され、島を陰鬱な空気が覆う。道中の遊戯が呼び水になったかのような惨事は、終わらない。——連絡と交通の手段と絶たれた島に、いったい何が起こったか?由緒正しい主題に今様の演出を加え新境地を拓いた、第四回鮎川哲也賞受賞作。

創元推理文庫文庫本中)

 

感想(ネタバレあり)

クローズドサークルです。

横溝正史以来、これまで瀬戸内海の島で何度殺人事件が起きたのやら。日本の推理小説では、瀬戸内海の島に閉じ込められがちです。瀬戸内海の無人島に誘われたときには気を付けた方がよいですね。

 

最後のどんでん返しが最大の見どころだと思います。

どんでん返しまでは「一人称でその人が犯人というのはアンフェアじゃないの」と思っていましたが、どんでん返しで「やられた」と思いました。

 

椋さんがモーターボートの鍵を捨てて島を孤島にしちゃったくだりにはちょっと無理があったかな。椋さんの短気で殺人事件が起きた島に閉じ込められるなんて、椋さん、皆にぼこぼこされるでしょ。

 

文体はまわりくどいし、カタカナ表記は独特(「-」を使わない)なので、苦手な人は苦手かも。私は昨日の「青葉の頃は終わった」に続いて読んだので、すんなり入り込めましたが、西村京太郎や松本清張の次に読んでいたら、なかなか入り込めなかったかもしれません。

 

最初の殺人で心臓が切り抜かれていたのは、特に意味はなかったみたいです。

 

トリックのメモ(ネタバレあり)

 

・刀の血のりトリック 

鞘の中に血を入れる(動物)。

だましたい相手にきれいな刀を見せてから、鞘におさめる(ここで血が刀につく)。

密室に刀を置く(だましたい相手しか刀を使うことができない)。

・密室トリック

キーホルダーに正しい鍵がついているとは限らない。

キーホルダーの鍵を入れ替えることで、密室を作る(AのキーホルダーにBの鍵、BのキーホルダーにAの鍵)。

AのキーホルダーについたBの鍵を壊すことで、AのキーホルダーにBの鍵がついていることを確かめられなくなる。

ただ、BのキーホルダーにAの鍵はついたまま、犯人の手元に残る(Bの鍵は壊れたから入れ替えることができない)から、BのキーホルダーについたAの鍵をAの鍵穴に入れると一発でバレる。

この作品では、A、B、C三つの鍵をずらした。トリックの原理はAとB、鍵とキーホルダーが二つのトリックと同じ。

・返り血のついた服は他の人の服などと一緒に燃やしちゃえ。木を隠すなら森理論。

一人(犯人)の服だけ燃やしたらばれるから、皆の服も一緒に燃やす。死体も燃やすことで、「死体を燃やすために服に火をつけた」と犯人の本当の狙いを分からなくする工夫。